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日本のインターンシップはどんなもの? ある留学生の経験

日本での留学中にインターンシップを経験したいと考える留学生は多いでしょう。企業で一定期間インターンシップに参加すれば、社会人として必要なスキルを体験できるだけでなく、日本の労働文化を理解することもできるでしょう。しかし、留学生にとっては、インターンシップ先の探し方や、日本でのインターンシップがどのようなものなのか、よく分からないことが多いようです。この記事では、ある一人の留学生が自身の日本でのインターンシップについて、体験談を語ってくれました。

学生の名前 :Vanessa LIN(国立パリ・ラ・ヴィレット建築大学からの交換留学生)

インターンシップの参加は何回?どんな仕事のインターンシップだった?
建築を専攻しているVanessaさん。彼女は以下の建築設計系の会社でインターンシップを経験した。

1) ICADA(福岡)
2) アトリエコマ(福岡)
3) 隈研吾建築都市設計事務所(KKAA)(東京)

インターンシップの期間はすべて4週間で、日本で1年間授業を受けた後、フランスに戻る前にこれらのインターンシップに参加したとのこと。建築に関連する仕事で、企業によって仕事の文化やプロジェクトの種類など、さまざまな経験をすることができたそう。

日本でのインターンシップに参加した動機(モチベーション)は?
Vanessaさんが日本でのインターンシップを希望した一番の理由は、「フランスとは異なる日本の労働文化を知り、働く経験をしたかったから」。また、彼女自身の修士論文が隈研吾氏の作品に関連するものであったため、隈研吾建築都市設計事務所(KKAA)での仕事について知りたかったという動機もあったとか。

なぜ複数の会社でインターンシップしたの?
「自分に合う働き方や会社を知りたかった」というVanessaさん。そのため、大きな会社と中小規模の会社の両方での経験を希望して、3つの異なるタイプの企業でインターンシップを経験することになったそう。

どうやってインターンシップ先を見つけて、参加が決まったのか?
1)アトリエコマ:「きっかけは、友人がこの会社でインターンシップをしていた。その友人によると、社内の風通しが良く雰囲気のよい会社とのことで、この会社でのインターンシップに興味を持った」

2)隈研吾建築都市設計事務所(KKAA)
「きっかけは、この会社も周りの学生のおすすめの会社の一つだったこと。修士論文が隈研吾氏の作品に関連していたことも決め手となって、この会社でのインターンシップを希望した」この会社は本来、3ヶ月以上のインターン生しか受け入れていない。しかし、彼女は1ヶ月のインターンを希望していたので、指導教員の先生に相談したところ、先生の助力もあって、幸運にも、1ヶ月のインターンシップという条件で選考試験を受けることになったそう。

どちらの企業でもポートフォリオの提出が求められた。これはフランスでも日本でも同じで、デザインや建築系のインターンシップの選考にはポートフォリオの提出が義務づけられる。数ヶ月かけてポートフォリオを準備したVanessaさん。「他にも数社に応募したけど、周りの留学生の中には、インターンシップに参加するまでにもっと多くの企業に応募していた人もいたから、私の場合は数社だけでラッキーだった」とのこと。

インターンシップでどんな体験をしたのか?
アトリエコマは福岡にある従業員3、4人の小さな建築事務所。アットホームで家族のような会社だった。住宅プロジェクトの提案や、リサーチ、アイデア開発、模型の作製からクライアントへのプレゼン(実際に2社間のコンペに参加した)まで、さまざまな仕事を経験したVanessaさん。「本物の建築の仕事」を体験できたと語った。「頭を使う時間が長くて楽しかった」とも。コンペでは見事勝利し仕事を勝ち取る経験もできたそう。

KKAAは300人規模の大きな会社。インターン生はメンターからマンツーマンで指導を受け、メンターから与えられた仕事に取り組む。仕事はメンターの仕事の一部を担う形で、例えば、Vanessaさんの場合、リサーチや、模型、画像などのビジュアル作製を日々行っていたそう。「この会社でのインターンシップで、会社のシステムについても学び、チームワークも経験できた」とのこと。

同僚とのコミュニケーションはどうしていた?
アトリエコマでは、同僚たちはほとんど英語を話せなかったそう。そんな中同僚とどうやってコミュニケーションをとっていたのか。

「インターンとして参加していた私の友人が、他の同僚との通訳の役目をしてくれたんです。ほかにも、コミュニケーションの手段として絵を描いたりしていました」

KKAAは国際的なプロジェクトを多くこなしていることもあり、ほとんどの社員が英語を話すことができる。Vanessaの場合、特に彼女のメンターは流暢に英語を話せたそう。この会社は独自のインターンシップ・システムを開発し、良好なコミュニケーションと指導をサポートしている。「この会社は、私のほかにもインターンシップに来ていた留学生が多かったので、彼らと一緒に働きながら、お互いをサポートし合うことができました」とのこと。

日本でのインターンシップ中に遭遇した困難は?
母国フランスとは違う環境に戸惑うこともあったというVanessaさん。困難だと感じたことをいくつか教えてくれた。

  • 始業時間の固定とデスク拘束

始業時間が決まっており、決められた時間内は、長時間デスクに座っていなければならなかった。

  • 残業

フランスに比べ、勤務時間が長く、帰宅時間も遅かった。また、定時で帰れる状況でも帰っていいのかどうかわからないこともあったり、進んで遅くまで残って仕事を終わらせることもあった。

  • 宿泊費と経費

日本でのインターンシップでは、宿泊費と交通費が少し支給されただけで、手当や給料は支給されなかった。そのため、東京の友人宅に滞在させてもらったそう。

  • 建築デザインプロセスの違い

「日本でのインターンシップを経験したことの利点のひとつは、異なる建築デザインアプローチを経験できたこと」と語るVanessaさん。しかし、それは同時に困難ももたらしたそう。

「日本とフランスでは、企業がとる建築のアプローチが異なるんです。フランスではリサーチに多くの時間を費やして、合理性を重視する。なぜ建築をそのようにデザインするのかという理由が重要となります。分析が重視されるということ。例えば、素材の種類やエコシステムを分析し、適性を判断することが求められるんです。

一方、日本では視覚化が重視されているように思う。リサーチや理由付けよりも、建築のコンセプトが重視され、コンセプチュアルな建築が多い。つまり、デザインが重視される。新しい形や、デザイン、資材を試したりと、実験的に建築を行っている印象があります」

これは日本とフランスの建築プロセスの違いであり、Vanessaさんは、芸工在学中にも同じことを感じていたそう。

  • 使用するソフトウェアの違い

建築プロセスの違いは、使用するソフトの種類にも影響する。日本でのインターンシップ中、Vanessaさんは、フランスでは使ったことのない新しいソフトウェアの使用方法を覚えなければならなかった。

日本とフランスのインターンシップの違いはなんなのか
Vanessaさんの体験から、日本とフランスでは、建築プロセスに違いがあり、その結果仕事内容も違っていることがわかった。そのほかにも感じた両国でのインターンシップの違いがあったそう。「働き方にも違いがあります。フランスでは、会社はインターン生により多くの責任を与えます。インターン生はより多くのミーティングに参加し、もっと社員みたいに扱われるんです。働き方も気楽です。コーヒーブレイクもある。もちろん、残業もありますが、基本的には、終了時間が午後7時であれば、午後7時には仕事をやめて、そのあとはプライベートの時間を楽しむだけです」

Vanessaさんのお話から、外国人として日本でのインターンシップで経験したさまざまな利点と課題の両方が明らかになりました。困難に直面しつつも、彼女が日本でのインターンシップで得たものは、それを上回る価値があったようです。この記事は、外国人留学生が日本でのインターンシップに興味を持つきっかけになることでしょう!

日本でのインターンシップに挑戦したい人も、まだ興味があるだけの人も、まずは日本人の学生におすすめのインターンシップ先を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか!きっと日本人学生たちは喜んで教えてくれるはずです!

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<執筆者>
長谷川愛
芸術工学府人間生活デザインコース 修士2年

私は外国の文化にとても興味があります。なかでも中国文化が大好きです。芸工で留学生と友達になると、自分の視野が広がるのでわくわくします。芸工は、自分のクリエイティビティを高められるだけでなく、国際的な視野を広げられる場所でもあります。留学生も日本人学生も、芸工の国際性を活用しましょう!