九州大学へ留学したい方

私の海外探訪 中国

芸術工学府修士2年の長谷川愛です。私は中国文化が大好きな日本人の一人です。日本に留学してくる留学生が日本文化を愛するように、私も中国文化が大好きです。

今回、私は中国好きが高じてエッセイコンテストで入賞し、副賞として冬の中国7泊8日の研修旅行に参加することができました。この記事では、私の中国での体験を紹介します。もしかしたら、日本を体験するために芸工に来た留学生も、日本以外の国を知る機会を持つことがあるかもしれませんね。

中国訪問の背景
パンダ杯Panda Cupは、「私と中国」をテーマに日本語で作文を応募する、毎年開催されている作文コンテストです。私は2023年度に応募し、上位10名に贈られる優秀賞を受賞しました。今年の応募総数は846通で、その中から個人賞の上位20名と団体賞を受賞した学校の学生代表1名、合計21名の日本人が中国研修旅行に招待されました。冬の北京と蘇州を巡る7泊8日の旅程でした。

今回の中国訪問で驚いたこと、デザインを学ぶ学生の視点から気づいたことを4つ紹介したいと思います。

1. 中国研修参加者のバックグラウンド
作文コンテストで入賞し、訪中研修に参加した参加者のバックグラウンドは、大学生、社会人、高校生とさまざまでした。中国に興味があるということで、中国語を話せる人が多かったです。みんなの中国語の実力以上に驚いたのは、韓国語を話せるメンバーが多かったことです。もともとは韓国のアイドルグループが好きで、グループの中国人メンバーの大ファンになり、それがきっかけとなって中国に興味を持つ若者が増えているようです。他にも、中国の映画や小説、アプリなどをきっかけに中国に興味を持ち始めた参加者がいました。私は、国家間の友好の鍵は「ソフトパワー」だと思っています。「ソフトパワー 」とは、主に、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなどの文化を指しており、他国の人々にその国について知ってもらい、国のファンになってもらうという効果を持っています。これは、異なる国の人々同士の友好につながると思います。

蘇州の長城で参加者と一緒に撮った写真

2. 技術の進歩
言うまでもないことかもしれませんが、中国の技術力は、特にIT分野において目覚ましいものがあります。

今回の訪中では、いくつかの企業を訪問する機会を得ました。北京では、あるIT企業が開発した先進的な製品や技術を実際に体験することもできました。企業訪問の翌日には、北京大学や北京語言大学の学生とともに北京市内を歩き、課題を見つけ、IT企業の技術をどのように活用すればその課題を解決できるかをワークショップで話し合いました。

以前、夏に大連理工大学を訪問した際、大学の門の前に顔認証ゲートがあったり、小さな商店でQRコード決済が使われていたりして、とても驚きました。私は、中国が街の問題の解決のためにデジタル技術を応用することで進歩しているのではないかと考えています。今回の訪中で、その考えはさらに強くなりました。蘇州では、人々がスマートフォンの電気を充電できるベンチや、路上で交通違反者を検知して記録する装置を目にしました。自動運転バスやタクシーにも乗りました。

中国では日本よりもeスポーツが受け入れられているように思います。時には、選手がアイドルのように扱われることもあるようです。また、IT企業が自社の技術を宣伝するために使うグラフィックデザインやプロダクトデザインは、とてもかっこよく未来的です。私は個人的には、中国が今日のように技術発展を成し遂げているのは、デジタル世界をいち早く取り入れ楽しんでおり、さらに技術をクールな方法で宣伝する技術を有しているという背景があるからだと考えています。

企業訪問をした際に撮った写真
スマートフォンが充電できるベンチ

3. パブリックスペースの積極的な利用
中国は日本に比べてパブリックスペースが多い印象があります。日本では小さな公園があちこちにあり、子どもたちやお父さん、お母さんが楽しそうに遊んでいる姿を見かけます。しかし、高齢者を見かけることは少ないように思います。見かけたとしても、一人で散歩しているか、一人で座っている人がほとんどです。一方、中国では広場があちこちにあり、広場で目を引くのは、シニアたちが集団で踊ったり、運動したりしている姿です。また、朝でも夜でも、時間帯に関係なく元気に動くシニアの姿が印象的です。日本では、高齢男性のように定年退職後に地域社会になじめない人がいます。家に閉じこもり、身体が虚弱になり孤独を抱える高齢者もいます。こうした問題は今に始まったことではありません。中国のように、高齢者が近隣の広場を利用して楽しく過ごせる文化が醸成されれば、問題解決につながるのではないかと思います。また、中国の歩道には面白い形のストリートファニチャーやオブジェ、運動器具などが置かれており、人々が公共空間や街並みを楽しむことができるようになっています。

変わった形の黄色いベンチ@北京

4. デザイン
私が中国をこよなく愛する理由のひとつは、明代の伝統的な中国建築と家具のデザイン(ここでいう「デザイン」とは、形や配色、伝統的な模様のことである)に魅力を感じているからです。今回訪れた蘇州は、明代の古典建築と庭園で有名な土地です。「天上に極楽あり、地上に蘇州、杭州あり」という有名な言葉があるほど、蘇州は美しいところです。今回、蘇州の古典建築や庭園、家具を見てとても感動しました。

私は、中国の伝統的なデザインの特徴のひとつは、内と外とのつながりを重視することにあると思っています。その典型的な例が、写真のように家の窓や庭の塀に見られる、外から内側あるいは内側から外側を見ることができる花窓です。花窓は中国デザインの真髄のひとつだと思います。街を歩いていて、花窓のモチーフが街頭のサインにも応用されているのを見つけました。日本でも街頭のサインには、その土地の文化や風景を象徴するモチーフが使われることがあります。中国で面白いと思ったのは、写真のように、花窓のデザイン的特徴を生かして、こちら側と向こう側の空間をつなぐようにサインが形づくられていたことです。

また、観光地の伝統建築と調和した展示のデザインにも感銘を受けました。 例えば、蘇州の伝統建築の書斎では、漢字を書いた紙を縦に並べたインスタレーションがあり、大変美しかったです。一方で、このような展示は日本とは異なります。日本の伝統的な建築物では、できる限りそのままの状態で保存・展示されており過度な装飾は少ないように思います。この点についてはいろいろな意見があると思いますが、私は、少々過度であっても、蘇州の伝統的な空間の美しさを強調した素晴らしい展示に感動しました。

伝統的な花窓
蘇州で見かけた観光客向けのサイン
蘇州で見かけた観光客向けのサイン
蘇州伝統建築での展示

中国への愛が溢れる記事となってしまいました。皆さんは自分の国以外に好きな国はありますか?その国を実際に訪れる機会はたくさんあります。例えば、私は修士課程の2年間で、内閣府の青年国際交流事業(昨年はオンラインだったので中国には行けませんでした)や、協定校主催の短期研修プログラム、作文コンテストの副賞などで中国を訪れる機会がありました。まだまだ、いろいろな機会を利用したいと思っています。

もっともっと多くの日本の学生たちが、様々な機会を求めて、日本国外へ行き、自分の好きな国を訪れてくれることを願っています。もちろん、日本に興味を持ち、様々な機会を利用して日本各地や外国を訪れる海外出身の皆さんとお会いできることも楽しみにしています。それでは、会える日を願って!

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<執筆者>
長谷川 愛
芸術工学府人間生活デザインコース 修士2年
私は外国の文化にとても興味があります。なかでも中国文化が大好きです。芸工で留学生と友達になると、自分の視野が広がるのでわくわくします。芸工は、自分のクリエイティビティを高められるだけでなく、国際的な視野を広げられる場所でもあります。留学生も日本人学生も、芸工の国際性を活用しましょう!