九州大学へ留学したい方

国際学会での発表 ~私のタイでの経験~

日本、特に芸工への留学を決めたとき、私は留学すること自体が自分のキャリアの頂点になるだろうと思っていました。ですから、日本への留学中に、タイで行われる国際色彩学会で自分の研究を発表することになるなんて予想もしていなかったのです。タイでの学会発表は、間違いなく私の人生で最高の経験のひとつとなりました。

芸工の修士課程で学ぶ学生は、所属研究室で自分の興味に沿って自分自身の研究を行うことが義務付けられています。私の場合、メディアデザインコースの研究室に所属し、二色型色覚について研究しています。とても奥深く、科学的で多くの側面があります。さまざまな困難もありますが、非常に興味深いトピックです。

研究を始めてまだ数カ月の頃(2022年)、ゼミに参加していたとき、私の研究室の指導教員の先生が、毎年(違う国で)開催される色彩研究に関する学会について教えてくれました。今年(2023年)はタイのチェンライでの開催でした。先生が私にこの学会での発表を提案してくれた時にはとても興奮しました。しかし、私の研究はまだ初期段階であり、これからプロセスを踏んでいくところだったので、学会で本当に自分の研究について発表できるのかどうか分からないという思いがありました。また、修士課程の学生として履修している授業に集中する必要もありました。しかし慎重に検討を重ねた結果、私は思い切って学会発表に参加して目標達成のために一生懸命頑張ることに決めたのです。

学会発表をするには、自分の研究の概要を添えて応募し、学会主催者側に承認されなければなりません。また申請期間が短かったので、私は急ぐ必要がありました。指導教員の全面的なサポートのもと、なんとか応募を完了し、承認されることができました。その知らせを聞いて、私は興奮して有頂天になりましたが、同時に、これからが本番だという不安に包まれました。それからの数カ月間、私は最終提出用のレポートや、発表のためのポスターを作成しました。実を言うと、私は、私が所属する研究室の学生だけでなく、芸工で学んでいる人なら誰でもこのような学会に応募できることを全く知らなかったのです。また、私の場合は特別で、飛行機代、ホテル代、学会参加費を指導教員が自らの研究費から負担してくださいました。このように援助をいただいたことは、国際学会で発表するという私の新たな夢を実現するのに大きな助けになりました。私の個人的な出費は、食費、学会主催のショートトリップ(オプション)、それから友人へのお土産やプレゼントだけで済みました。

数ヶ月に及ぶ長い準備期間を経て、いよいよあの大事な日がやってきました。研究室の仲間2人、そして指導教員と一緒に1週間の旅に出発する日です。まず福岡からバンコク、そしてチェンライへ行くという道のりでした。旅はとても順調でした。いろいろな空港でたくさんの新たな経験をしました。ミス・ユニバース・タイの参加者に会うなんてことまでできました。チェンライに到着すると、ホテルのシャトルバスが私たちを待っており、宿泊先であり翌日から学会が開催されるホテルまで送迎してくれました。ホテルはすばらしく、サービスも充実しており、五感で私を楽しませてくれました。

学会初日には、水彩画の基礎講座と、色彩と感覚のリラクゼーション効果についての講座の2つのワークショップが開催されました。私は水彩画のワークショップを選び、とてもリラックスして充実した時間を過ごすことができました。学会では毎日ビュッフェ形式の昼食が提供されました。料理は非常に充実した内容で、特に新しい食の体験となったタイ料理など多くの種類の料理があり、また果物の種類と量も豊富で、私はこの時間を最大限に楽しみました。初日の終わりには、飲み物、食べ物、美しいタイの伝統音楽がそろった歓迎レセプションがあり、最後に全員が参加して、ロウソクと花を乗せた蓮の形をした小舟を川に放つ、「ロイクラトン」と呼ばれる水の女神や仏様に感謝を捧げるタイのお祝いを行いました。

その後の数日間は、色彩科学に関する様々なカンファレンス、参加型プロジェクト、色彩科学トピックに関するディスカッションが行われました。残念ながら、その多くが別々の部屋で同時に行われていたので、すべてに出席することはできませんでしたが、指導教員の発表を含め、私はほとんどの発表やイベントに出席できました。3日目の最後には、参加者全員がプロフェッショナルの仲間として互いをねぎらう宴会が開かれました。日本人だけでなく、イタリア、ブラジル、アメリカ、アルゼンチン、タイなど、さまざまな国の研究者たちと接することができました。新たな人脈を作る機会となったので、学会のなかでもとても重要な時間だったと個人的に思っています。

4日目は展示とポスター発表が行われる日でした。私はとても緊張していましたが、他の参加者や教授たちと打ち解けてからは、自信がかなり増しました。発表はとても興味深く、発表後多くの教授が私のもとに来てくれて、深い内容のコメントや私にとって挑戦的な質問をしてくれました。そのおかげで、深堀りして学ぶべき内容がまだまだたくさんあることを理解することができました。また私の研究は時間がかかり、発表する内容も多く、深いテーマなので、口頭発表したほうがいいというコメントまでいただきました。

発表が終わり、いよいよ観光に行く時間がやってきました。初めに、エメラルドの仏様がいるエメラルド寺院「ワット・プラ・ケオ」を訪れ、続いて、豊かなサファイアの色合いで知られる青い寺院「ワット・ロンスアテン」へ行きました。この寺院は、地獄エリアから入って仏様が待つ天国へとたどりつくイメージで設計されています。3カ所目は、ホワイト・テンプルとして知られる美しい「ワット・ロンクン」に行きました。こちらは仏教寺院でありながら個人所有の美術展示館のような場所です。最後に、緑の丘に囲まれた山の上に巨大な女性の仏様が鎮座する「ワット・フゥアイプラーカン」を訪れました。白壁の中国・ランナー様式で建てられたユニークな建築で知られる場所で、エレベーターで仏様の頭の中に入ることもできます。

その日の夕方は(そして翌日も)、研究室の仲間そして指導教員と一緒にチェンライの「ナイトバザール」(夜市)に行きました。手作り雑貨を買ったり、象のディテールが施された素敵なシャツを買ったり、チェンライのいろんな郷土料理を食べたりしました。この旅のおかげで、1年半にわたって研究室で共に過ごしていたものの、言葉や文化の壁でなかなか親睦を深めることができていなかった研究室の仲間と、深い絆で結ばれることができました。とても美しい思い出です。研究室の仲間はいつも私にとても親切にしてくれていたのですが、今回の旅を通して、私たちの関係は、さらに美しく新しい形の友情へと変化したのです。

学会は、興味深いカンファレンスと閉会の言葉、そして各賞の授与で締めくくられました。バンコクに戻ってからは、約9時間半の待ち時間があったため、時間を有効に活用してバンコク市内を散策し、食事やタイの文化をもう少し楽しみました。

今回の国際学会への参加を通して、私は新たな知識と経験に満ちた素晴らしい冒険をし、研究室の仲間や指導教員との絆も深めることができました。九州大学、私の研究室、そして特に私の恩師であり、公私ともに私を支えてくださる指導教員の須長先生、以上のみなさまが与えてくださった機会がなければ、私がこのような経験をすることはなかったと思います。最後に、須長先生が教えてくれた私が参加できる学会や展示会は、まだまだたくさんあります。可能性は無限大です。

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<執筆者>

Hector Alejandro Palomo Reyes
芸術工学府メディアデザインコース 修士1年
私はグアテマラから来た修士課程の留学生です。デザイン、写真、文章を書くことが大好きです。新しい友達を作ったり、お互いのことを話すのがとても楽しいです。私と一緒に、日本文化を巡る忘れられない旅に出かけましょう。

<翻訳者>

長谷川 愛
芸術工学府人間生活デザインコース 修士2年
私は外国の文化にとても興味があります。なかでも中国文化が大好きです。芸工で留学生と友達になると、自分の視野が広がるのでわくわくします。芸工は、自分のクリエイティビティを高められるだけでなく、国際的な視野を広げられる場所でもあります。留学生も日本人学生も、芸工の国際性を活用しましょう!