在学生の方

ドイツ・ケルンでの留学生活2013-14

留学先:ケルン応用科学大学  KISD (Koln International School of Design)
留学期間:2013年9月~2014年8月
留学時の所属と学年:大学院芸術工学府 デザインストラテジー専攻 修士1年デザインビジネス

ケルン応用科学大学(KISD)の話を聞いたとき、この学校しかない、と思ったのを覚えている。学科も学年も区別のないフラットな関係性の中で面白いデザインプロジェクトが動いているという環境が魅力的だったのだ。
楽器・音楽製作からバンドをやるものや演劇の舞台、衣装、演出をつくるもの、本とは何かという議論から入り、自分なりの本を制作するものなどなど、とても幅広いプロジェクトをやってきた。それってデザインなの?と思うかもしれないが、デザインとはつまるところ手段なのだ。デザインをやるというよりデザインでやるという感じ。学生も皆、自分たちがデザイナーだという自負を持っている。
学校生活で最初の大きな発見は、私たちの持つ常識は常識ではないと気づいたことだ。プレゼンテーションというと、スライドを用意して、それを見せながら教室の前に立ってプレゼンする様子をなんとなく思い浮かべる。しかし、プレゼンテーションがそういうものだと誰が決めたのだろうか?作品を見せたいなら、しっかり演出してエキシビジョンにすればいいし、参加型にしたいならカフェをつくってしまえばいい。場所だって決して教室の必要はない。廊下でも、中庭でも、階段でも、雰囲気や使い勝手で自由に選べば良い。そんな”見せ方”までしっかりこだわるのがここでのデザインなのだ。その週に終わるプロジェクトがプレゼンをする金曜日はいつも楽しみだった。
学校もさることながら、この街でやる面白さもあった。例えば自転車に関するリサーチプロジェクトで、はじめに自分のトピックを何にしようかと考えながら散歩していたとき、思いつきで近所のバイクメッセンジャーのオフィスに入ってみた。するとその場の流れで1時間もインタビューし、その後4ヶ月間、仕事中ヘルメットや自転車にカメラを取り付けて走ってもらったり、アプリで走行情報を記録してもらったりと快く協力してくれた。日本のようにアポイントを取る必要も、機密情報を隠されることもなく、なんてやりやすいのだと驚いた。リサーチ外でもホームパーティーに招かれたり、レースへ同行し撮影係を担当したり、という付き合いまで発展したのも面白い。
さて、話も終盤。盛りだくさんの留学生活の中でも、毎週木曜の朝、学内のカフェで働いていた時間が私のお気に入りだ。授業の一環として学生グループで運営されているカフェは、みんなコーヒーからビールまでよく買いにくるので、学校中のいろんな人と会話ができた。名前も知らない子との世間話や、教授の”いつもの”注文を受けることが本当に心地よかったのだ。
ここまでで私の楽しさは伝わっているだろうか?私のつくるカプチーノはなかなかの評判だった、ということでこの記事を終えようと思う。

荒木彩可