在学生の方

ドイツ・ケルンでの学生生活2022-23

留学先:ケルン応用科学大学
留学期間:2022年9月~2023年3月
留学時の所属と学年:芸術工学部芸術工学科 未来構想デザインコース 3年
※国際プログラム1期生

自分が何を勉強したいのかはっきりしなかったのですが、国際的な雰囲気が気に入り、いろいろな分野を勉強でき、留学生が多いケルン応用科学大学を選びました。

大学での経験
最初の頃は、キャンバスバッグにプリントする機械(設備の名前は忘れました)など様々な設備の使い方を教えてくれる授業や、実際に設備を試してみる体験授業もありました。初心者の場合、使い方を理解するのは難しいかもしれません。その為、私は最初の授業以降改めて設備の使用申請をすることはありませんでしたが、小物作りが好きな人にはおすすめです。

この学校は、生徒が自分で考え、観察し、テーマを選び、情報を調べ、見学に行き、その結果を好きな形で報告し、発表させることに焦点を当てています。発表会では、実用的なデザインよりも芸術的な創造に近い興味深い作品が多く見受けられました。「ジェンダーとデザイン」の授業では、男子生徒を気まずくさせるであろう映画を上映しました。もし日本であればこのようなテーマを選ぶ際、先生方はもっと注意し、特定のグループが気まずさや、不快に感じるような映画を見せることはしないのではないかと思いました。

クラスのディスカッションでは、一人の生徒がヨーロッパやアメリカによるアフリカなどの植民地化について意見を述べ、活発な議論が交わされました。アジア人の私はそのペースに追いつく事が難しかったのですが、歴史や文化の違いからくる異なるトピックへの関心に興味深さを感じました。また、別の授業では植民地時代の歴史に関する街への旅行に参加し、「植民地支配は人種差別と文化的優越に基づいており、白人は文明の象徴とみなされ、植民地化された人々は「救い」「導く」対象とみなされ、その事は実際には多くの問題を引き起こした」と教えられました。

また、アイデンティティ論の授業では、母国語がロシア語で家族がウクライナ語を話さない在独ウクライナ人を紹介してもらい、多言語アイデンティティを研究テーマにしました。彼女に会ったことで私の視点は大きく変わりました。ただ教科書から学ぶよりも、実際に経験した人々とコミュニケーションを図ることはより興味深いと感じました。

課題を皆で終える頃には、自然とお互いの話を共有しあっていました。その中で、パレスチナ人やコロンビア人にも出会いました。パレスチナ人のクラスメイトは、警察に知られないようにフランス人のふりをして国境を潜り抜けた話を、コロンビア人のクラスメイトは、人権弁護士の友人から聞いた、アメリカに密入国したコロンビア人の体験談を話してくれました。彼らの話は直接聞くと非常に衝撃的でした。

アパートを借りる
ドイツでアパートを見つけることは思っていた以上に困難でした。多くの需要があるのに対し、供給は少ないようです。ドイツではアパートを借りるためのアプリがあるのですが、詐欺のようなケースもいくつかあります。私は20回以上申し込みましたが、返事が来たのは2、3回だけで、それも借りるまでには至りませんでした。最終的に、たまたま中国人留学生のグループから借りることのできる部屋を見つけることができました。

銀行口座と保険申請
ドイツでは住所登録の手続きが非常に複雑です。区役所のホームページから用紙をダウンロードし、大家さんのサインをもらう必要があります。また混雑している地域に住んでいる場合は区役所に行く為にアポイントを取らなければいけません。そして、住所登録をしないと銀行口座を開設することや保険の手続きも難しくなります。通常、銀行カードや保険の手続きは手紙を送る形で進められます。それは手続きに時間がよりかかるということです。辛抱強さを身につけなければなりません。また、健康にも気をつけないといけません。もし保険の手続きが完了する前に病気になってしまったら、医療費は想像以上に高くなる可能性があります。

国際郵便
もしドイツ滞在中にオンラインで海外から物を購入する場合、次のことはぜひ知っておいてください。

  • 購入したことの証明になるものを取っておく。またそれをドイツ語または英語で翻訳しておく。
  • 購入した物がドイツに送られてくると、自宅に配達される前に税金を払わないといけない。
  • もし税金を払うのが遅れた場合、購入した物を保管しておくためにかかる料金を支払わなければならなくなる。

カフェテリア
学校は比較的小さく、繁華街に位置しており、近くには多くのスーパーやレストランもあります。またバスやトラムの停留所もあるので、とても便利です。放課後にはバスで買い物に行くこともありました。学校周辺には小さなカフェテリアもありますが、あまり沢山のメニューを置いていませんでした。少し足を伸ばせば、メニューのもっと豊富な大きなカフェテリアもあります。カフェテリアでは学生カードが使用でき、銀行のカードからトップアップしておくと便利ですが、私は銀行カードを持っていなかったので、同級生の銀行カードを借りて支払い、彼らに現金で支払うこともありました。レストランでの食事は通常10ユーロ以上かかり、その他に飲み物にも費用がかかります。水でさえ無料ではありません。最初は慣れていなかったため、10ユーロのメニューを注文し、最終的には合計16ユーロを支払うことになった時は驚きました。

交通
ドイツでは1か月の学生パスを学校の登録料含め500ユーロで購入でき、学生パスで同じ地域の普通列車に乗ることができます。もし遠くに行きたい場合は、以下のことに留意してください。

  • ドイツの交通システムは日本のシステムほど効率的ではない。
  • バスは頻繁に遅れ、キャンセルになることもある。
  • 遠方では列車の本数は少なくなる可能性がある。
  • 行先によっては、列車に乗るために他の交通手段で別の駅に行く必要がある。
  • 電車に乗り遅れた場合は新しい切符を購入する必要がある。
  • 列車のチケット購入は航空券の購入に似ていて、早めに予約する必要がある。数日前までもしくは当日に購入すると、1か月前に購入する場合に比べて金額が3倍ほど高くなる。
  • たとえ5分前であっても列車のプラットフォームが変更されることがあるので、変更がないか頻繁にチェックする必要がある。
  • 長距離列車で移動する際には、ホームに留まる車両と先に進む車両で半分ずつに分かれることがあるので、自分が正しい車両に乗っているか気を付けておく。もしドイツ語が分からないのであれば、周りの人に聞くことも大切。学生パスは州内のみで使用できる。州境を越える場合は新しい切符を購入する必要がある。電車内には切符売り場がなく、アプリを使用して自分で切符を購入しなければならない。もしチケットを購入できなければ60ユーロの罰金を科される。
  • 移動中は終始、行先に向かう列車の情報などに注意しておくことはとても重要

公共デザイン
ドイツには困惑させられるようなデザインがあります。例えば、バスの標識がバスが来る方向と逆方向になっていたり、バス停にある地図は停車するバスのルートではなく、市内の路線図が表示されていたりします。なので、外国人にとっては行き方をナビゲートするのは難しいかも知れません。道路デザインと言えば、私は、コーヒーショップ(ほとんどの国で一般的に違法とされているドラッグも売っているコーヒーショップ)につながる裏路地を歩いたことがありましたが、その度に合法なのかなぁと疑問に思っていました。また、たくさんの車が秩序なくいろんなところに駐車されている通りに出くわすこともありました。その時は通りを突っ切るのは難しく、私は道の端を歩くしかありませんでした。

このような状況に遭遇したことに驚きました。きっと私が日本での整然とした便利な生活に慣れていて、先進国はどこも日本と似たようなものだろうと思っていたせいかもしれません。 ドイツで経験したまったく違う世界が、私の先進国に対するイメージを見直すきっかけになりました。

友達
お酒が飲めないし、バーやパーティに行くのも嫌いなので、社交的な集まりに頻繁には参加しませんでした。なので、あまり多くの友達はいませんでした。もっと自分から友達を誘って、より深い関係を築くべきだったのかも知れません。そうしたら、交換留学中もっと楽しかったかも。同じように「もっと一緒に遊んでおけばよかった」と後悔している同級生もいました。

天気
ドイツの冬は長く、雨は多いし、暗くなるのも早いので、夕方4時以降はあまり外に出たくありませんでした。この点からすると、ドイツへの交換留学は夏の間に来る方が良いかも知れません。

最高の思い出
ドイツでいくつかの困難に遭いましたが、たくさんの良い経験もしました。

日本に比べて人々がとても親切だと感じました。大きな駅でもエレベーターがうまく動かないことがあるのですが、空港やバス停・駅で荷物を階段や電車に運ぶのを手伝ってくれる親切な人に出会いました。

一般的に、ドイツの人は表現力が豊かで開放的です。十字路で赤信号を待つ若いカップルが路上でキスをしていたり、おじいちゃんとおばあちゃんがバスの中で隣に座っているだけでなく、手をつないでいたりします。一度住宅街を通りかかった時に、3階の子供が帰ってくる母親を見て窓を開けて手を振り、帰宅途中のその子の母親が抱きしめる仕草をしているのを見たことがありました。中国や日本、韓国にはあまりないストレートな表現が好きです。

また、彼らはかなり自由で、政治について率直に意見を述べるようです。私はちょうど中国がコロナ対策で街を封鎖する時期にドイツに行ったのですが、ドイツの人々はその中国の市街地封鎖に反対する集会を催していて、私も参加しました。このような外国の情勢に関する集会を日本でしているのを見たことがありません。

野菜や果物は日本より豊富です。 特に新鮮なブルーベリーやラズベリー、イチゴ、マンゴーは美味しくて、とても安いです。ドイツの乳製品や肉類も日本では味わえない美味しさです。ドイツの食べ物にはとても満足でした。内容量がとても多く、メニューに載っている物と実物がちゃんと同じでした。また、スーパーに行って見たことのないものを買うのがすごく好きで、大抵の場合、期待を裏切られることはありませんでした。そんな風にして買ったスーパーの冷凍ピザが最高に美味しかったです。

“too good to go”というアプリがあるのですが、レストランの残り物やパン屋さんでは売れないパン、品質が悪くスーパーでは売られないような野菜や果物などを激安でパックしてくれるもので、中身を選べないこと以外は欠点がありません。運が良ければデザートショップで絶品のフランスデザートを買うこともできます。冷蔵庫とオーブンがあれば、買ったパンが冷凍保存でき、温め直すことができます。3ユーロで買ったパンが2週間分の主食になります。一人では消費しきれないほどの量の時もあるので、買ったものは時折、道端のホームレスの人たちに配ったりしました。また道端で歌を歌っている高齢のおじさんにフルーツを分けることもありました。彼らはいつも感謝の言葉をくれました。

12月にはクリスマスのイベント、2月にはMardi Grasというカーニバルなど、とても賑やかなイベントが開催されるので、その雰囲気をとても楽しみました。 まとめとしては、交換留学に行ったことを後悔してはいないんですが、たくさんの大変な目にも遭いました。これらの情報がドイツへの交換留学を考えている人たちの参考になれば嬉しいです。